2009年9月5日土曜日

セスナ操縦体験 in バンコク

 バンコクに寄ることがあったので、そのついでにかねがね狙っていたセスナの体験操縦をしてきた。もちろん、セスナの操縦は初めてである。離陸から着陸まで、教官の手助けを得ながら何とか40分ほどのフライトを体験してきた。
 将来できればプライベート・パイロットの免許を取りたいと考えて早4年。その間、パソコンのフライトシミュレーターでなんども飛ばしてきたセスナ172スカイホークを今回、初めて機長席(左側)に座り操縦した。
 まず、率直な感想を言えば、当たり前であるが、パソコンのフライトシミュレータで飛ばすのと実機とではかなりの差がある。特に離陸、着陸に関しては、フライトシミュレータでうまくやれていても、かなり感覚が違うことを実感した。
 また、逆にフライトシミュレータがかなり練習になっていたことも事実である。おかげで滞空中の操縦はシミュレータでの感覚とかなり似通っていて完璧ではないだろうけども、高度の維持や速度調整などうまくできたと思う。この点は、教官も初めてとは思えないとほめてくれた。そして、シミュレータでの悪い癖も、見事なまでに再現された。そう考えると、パソコンのシミュレータの事前練習で完璧にソロフライトまでこなせれば、少なくとも離着陸を除き問題ないだろう。眼下に広がる風景を楽しむ余裕も生まれるはずである。
 今回お世話になったのは、旧バンコク国際空港(ドンムアン空港)にあるRoyal Airport Service という会社である。操縦体験のお題はずばり Flight Introduction (Cessna 172) である。このセスナ体験操縦は、以前は日系のある会社を通じて申し込むことができたのだが、すでに取次ぎをやめており、今回は直接 Royal Airport Service に申し込み実現した。
 セスナの体験操縦はハワイやグアムでもでき、値段も今回のものよりだいぶ安くできるようであるが、ハワイやグアムは何かのついでに寄るということはまったくないので、少々お高くついたが、バンコクで体験操縦をすることにした。金額はずばり、税込み 16050 バーツである。約2.8倍すれば日本円になる(以前より2000バーツ高くなっている)。
 Flight Introduction の中身は、事前の案内では講義1時間、体験操縦1時間とあった。予約は少なくとも3日前までに直接申し込む必要がある。今回は、メールでセールス部門に予約を入れたが、名前と日にちを伝えただけでOKだった。支払いは、終了後にカードでOK。
 予約にあたっては天候に注意した。この時期バンコクは1日1回は雨が降るような時期であり、特に夕立のスコールはすさまじいものがある。そんな中で飛ぶことはあり得ないので、比較的雨が降りにくそうな午前中をお願いしたところ、ドンムアン空港に朝9時来るように返事があった。メールにはその程度しか書いておらず、当日どのような手順になっているのか何も書いてなかった。
 空港には念を入れて早めについたが、あまり意味がなかった。9時ちょっと前で十分であった。メールでやり取りをした女性のスタッフが迎えに来てくれた。
 バンコクの南に開港したスワンナプーム空港が国内線含めてフル稼動するようになった現在、タイの玄関であったドンムアン空港は、運輸と格安国内線の運行のみを残してひっそりと存続している。そして、この空港内に Royal Airport Service がある。
 スタッフに連れられセキュリティーを通過し、待機していたバンでセスナ待機所まで移動した。バンには他にこのRoyal Aiprot Service でライセンス取得を目指しているという人とその教官とが同乗していた。この教官は17年ほどパイロットをしており、もともとは空軍所属で、その後、ボーイング747を操縦するコマーシャル・パイロットだったそうである。今は、このアカデミーで教官をしているとのこと。
 このアカデミーでは、同乗したタイ人のように免許を取ることも可能である。金額は39万バーツ。授業は土日のみだそうで、6ヶ月かかるらしい。
 さて、パイロット養成学校をかねるオフィスに到着。出してもらったコーヒーをすすっていると、今日の私の教官であるという男性パイロットが入ってきた。先ほどの教官同様、もともと空軍所属だった人で、不定期にここで教えているようである。
 待合の隣にあるミーティングルームでの準備も整い、早速レクチャーである。レクチャーは、スライドを使って教官が説明してくれるのかと思いきや、アメリカの某フライトスクールのDVDクリップを見せられた。内容は、事前にフライトシミュレータのフライングレッスンで勉強していたものがほとんどであったが、新しい話もあった。操縦に関係する重要な機体各部分の説明、エアロダイナミックスの基礎などであった。20分ほど見た後、教官のほうから先ほど見た内容についてもう一度スライドを見ながら、口頭で説明と思しきものがあった。説明と思しき、というのは、これはさっき見たね、的な説明だったからである。
 ちなみに、タイ人の英語は癖があり、なれないと聞き取りが難しいのだが、この教官も癖があり、また、大変流暢というわけでもなかった。DVDの英語は聞きなれたアメリカ英語でまったく問題ないと思うが、英語に慣れていない人には、タイ人の英語はちょっと大変かもしれない。
 非常に簡単なブリーフィングの後、天候の情報を持ってスタッフが入ってきた。その天候状況の紙を見せながら、どのような意味なのか記号の羅列を丁寧に説明してくれた。この日は、ネットの予報では雲がかなりはるという天気予報だったのだが、幸運にも10キロ以上視界良好という状況だった。おかげで、上空で遠くに林立するバンコクのビル群を見ることができた。風は毎時5ノットで、それほどひどい状況ではなかった。
 いよいよ体験操縦。空ではトイレがない。セスナのタンクは燃料満タンでよろしいが、こちらのタンクは空にしておかなければならない。用を済ませ、外へ。今日乗るセスナ172が準備万端待機している。セスナの点検を済ませ、コックピットへ。乗って計器を見ると結構古い機体のようである。パネル上部の光を遮るひさしのような部分が結構ぼろくなっていた。途中で故障しないか少し不安になった。
 教官は副操縦士の席である右側に座る。シートベルトを締め、ブレーキをオンにし、運行前のチェックリストを一つひとつ確認していく。教官は無線の調整をするが、電源が入らないと整備士を呼びつける。整備士は、電源が入ってませんよと答えている。
 え?この教官、大丈夫か。この機体はなれていないからと弁解しているが、不安がさらに募る。
 エンジンを回しプロペラが始動する。その後も、チェックリストの項目を確認し、いよいよ出発だ。教官がタワーとの交信を始め、離陸の許可を求める。OKが出たところでブレーキを解除し、ラダーペダルから足を少し離すとセスナがゆっくりと前に動き出した。一瞬ちょっとあせったが、徐々に前に動く。
 教官が黄色のラインに沿って進むように指示する。が、まっすぐ進まない。
 フライトシミュレータでは、ジョイスティックのみで飛ばしていたので、ラダーを踏んだことがない。ふらふらと進んでいく。初心者は、飛行機が曲がると操縦舵を車のハンドルよろしく動かしてしまうそうだが、ジョイスティックではスティックをひねる操作がラダーになっており、それに慣れていたからか操縦舵をハンドルよろしく動かすことはなかった。ただ、なぜだかわからないが、左にずれているのに左のペダルを踏んでしまい、さらに左へ曲がってしまう。それを教官が直してくれる。しばらくタクシングでまっすぐ進む練習。だいぶ慣れてきた。
 滑走路21の端に到着。その位置で待機。先に格安航空会社ノックエアの飛行機が離陸するようである。離陸の許可がでる。ペダルから足を離し、スロットルを一気に押し込む。ブオーンという轟音を立ててセスナが進む。教官が65ノットで離陸するよう指示。しかし、速度が上がるにつれて機体がまっすぐ向かない。ペダルを踏んで調整するがうまく行かないうちに65ノットになったのか勝手に離陸していた。
 その後は、西へ向かい1500フィートを維持。最終的には2000フィートまで上がり、ぐるぐる回っていた。
 上空はかなりタービュランスが感じられた。安定したシミュレータの飛行とはかなり違う。旋回ばかりしていたので、あまり、空から景色を楽しむという余裕はなかった。というのも、セスナ172は、翼が機体のうえにあるので、旋回して傾いていると下は見えるものの、横から遠くの景色は見えなくなる。
 30分ほど方角を変えたり、旋回したりしているうちに、そろそろ戻る時間になった。下の高速道路を目印に空港へ向かう。タワーからの指示で近くの上空で待機。そして、21R滑走路へ向けて右旋回で進入していく。ダウンウィンドレッグでは、すでに800フィートまで下げて、速度も落ちている。
 着陸直前までは、こちらで操縦したが、シミュレータでもそうだったように、滑走路から見て外側に機体がずれる。ラダーで調整するがうまく行かない。PAPIのランプは白2赤2で理想的だが、300フィートぐらいから教官が着陸するといって操縦を代わる。やはり、ど素人では着陸をすべて行うのは難しい。100フィートぐらいの高さになって、教官がまたこちらで操縦させてくれた。スロットルを完全にオフにして、ゆっくり下りていき、フレアの高さで適当に操縦桿を引く。
 ドスンという音とともに着陸。このときは、あまり大きな衝撃を感じなかったのだが、あとで後ろに仕込んで取っていたビデオを見るとかなりの音がしていた。
 速やかに滑走路を出るためスピードを出して進み、タキシングのため側道へ入る。ところが急にエンジンがノッキングを起こして大変なことに。教官がスロットルを調整して何とか納まる。後は、駐機場まで操縦し、なんとか無事に体験飛行が終わった。
 体験飛行が終わると、修了証をもらうことができる。教官と一緒に記念撮影をし、すべてのプログラムが修了した。
 感想としては、もっと事前にシミュレータで練習しておけばよかったと思った。というのも、この半年近く、仕事が忙しくてまったく操縦桿(ジョイスティック)を握っていなかったからである。復習と称して同じ条件でシミュレータを触ってみたが、やはり、かなり操作がひどくなっていた。ということは、事前にもっとスムーズにできるようにしておけば、実機でももう少しまともに離着陸できただろうなと思ったしだいである。
 次なる目標は、実際にライセンスを取ることであるが、さて、いつになるのやら。