手紙をさらに読んでみれば、IBCの調査編集部において広範な資料の何千という経歴のなかから選ばれたらしい。その基準はというと地域、国内外で十分な業績をあげているかどうかで、あんたは○○の分野の著名な専門家であるので、IBCのおめがねにかなった、とのことらしい。おお、わしもついに実績が認められたか、なんて言えるような立派なことは何もしていないはずだが。
ふむふむ。この賞に選ばれるとIBCの建物にその名が永遠に刻まれる?おお、すごいなぁ。でも、イギリスのケンブリッジにあるIBCとやらへ行って見に行く機会があるだろうか。
さらに、選ばれた記念に記念品であるメダルと証書をご用意いたしておりますと?。裏面にもなにやら書いてある。で、手紙を裏返して見ると、裏面は、ノミネート受諾申請書になっている。なになに、
- フルカラーの縦11インチ、横16インチの証書:US$155.00 または £97.50 、 US$8.00 または £5.00 の送料および手数料
- 公式銀メッキ記念メダル:US$315.00 または£195.00、US$8.00または £5.00 の送料および手数料
- 証書と記念メダルのセット: US$465.00 または£292.50 (送料手数料を含む)
下には、ご丁寧に「お支払いの詳細」として、クレジットカード情報を記載できる部分がある。
あれ、賞に選ばれたのにこっちがお金を払わないといけないのでしょうか。それもかなり高額。いやいや、こんなすばらしい賞に選ばれたのだから、多少の出費は、、、。というより、これはいわゆる紳士録商法というやつではないか?
さっそくググって見ると、けっこういろんな方がこの章を受けられている。それも名のある機関の。ということは、紳士録商法ではない?しかし、昔、ディプロマミル商法で金を出せば博士号が得られるというものがあり、日本でも結構なのある大学の教授がこれで博士号を受けていたなんて話もあるので、にわかには信じられぬ。
さらに、英語版のWikipedia で International Biographical Centre を検索してみると、 出てきた。読んでみると特に怪しいということは書いていない(中立的立場で書くのが原則だから当たり前か)。しかし、IBCが出している賞の数の多いこと。ざっとみても50以上はありそうである。
で、Wikipedia の下の関連リンク(See also) を見ると Author mill, Employment scams, Vanity press, Who's Who scam というのがあるではないか。Who's Who scams とは紳士録詐欺のことであるから、暗にIBCは紳士録詐欺をやらかしている機関であることが伺える。
ちなみに、Author mill とは一種の自費出版の形態で、大量の作家を生み出して、そこから利益を得ようとする出版の形態のようである。自費出版とは異なり、Author mill の場合は作家はなんらお金を払わなくとも良いらしいが、出版の質は非常に低く、また、販売網も作家自身が開拓しなければならないので、結局自分で再販のために本を買わざるを得なくなるようである。
また、Employment scams は、魅力的な職を紹介する際に経費としてお金を事前に払わなければならないというもので、海外での魅力的な職を紹介するだとか、銀行口送金だとかあるようである。
Vanity press は自費出版のことである。
いずれにしても、名誉欲に駆られる人は、このような紳士録詐欺に引っ掛るのだろう。ちなみに、このIBCのホームページからは、誰かを推薦したり、さらに、自分自身を推薦したりできるようになっている。こりゃまたご丁寧なことで。
紳士録といえば、世界的に有名なWho's Who があるが、こちらは選ばれてもその紳士録を買う以外はなんら義務はないらしい。